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コラム

データセンターの冷却方式は?冷却方法や最新トレンドを紹介

2025.11.19

AI・クラウドの拡大で、データセンターはかつてない熱密度に直面しています。
特にGPUを多用するAIサーバーでは1ラックあたりの消費電力が急増し、従来の空冷単独では排熱が追いつきにくいケースが増えています。

これからのデータセンターには効率的な冷却システムが不可欠であり、特に水冷技術は性能・コスト・環境のすべての面で次世代の鍵となります。

本記事では、データセンター冷却の重要性や主要な方式、データセンターの冷却課題や導入メリットや市場動向について分かりやすく解説します。

この記事でわかること
  • データセンターの冷却の重要性
  • 冷却方式の比較 
  • データセンターの冷却に関する市場動向とトレンド

データセンター冷却の重要性とは?

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データセンターにおける冷却システムは、サーバーを安定稼働させる生命線です。

サーバーは稼働中に大量の熱を発し、冷却不足は性能低下や故障、サービス停止を招く恐れがあります。

近年はAI・5Gの普及で演算処理量が急増し、従来の空冷方式では排熱が追いつかないケースが増加しています。そのため、冷却システムの強化は経営レベルの戦略課題となっています。

冷却効率を示す指標として重視されるのが電力使用効率を表すPUE(Power Usage Effectiveness) です。

PUE=「データセンター総消費電力 ÷ IT機器の消費電力」で表され、1に近いほど効率的だと言われています。
参考:データセンターにおける冷却方式の最新動向

PUEの改善は電力コスト削減とCO₂排出抑制の両立につながり、ESG経営上も極めて重要です。

サーバー発熱の増加と冷却ニーズの高まり

AI・クラウド時代の到来により、GPUサーバーは1台で数キロワットを消費するなど、発熱量が飛躍的に増加しています。

最新GPUは1基あたり700〜1000W以上を消費するため、従来の空冷による冷却では限界があり、対応しにくくなっています。

このため、電力消費の多いAIデータセンターなどでは水冷などの次世代冷却技術への移行が不可欠となり、演算能力の拡張と並行して冷却インフラを根本から見直す必要性が求められています。

冷却効率がPUE(Power Usage Effectiveness)に与える影響

PUEはデータセンター全体のエネルギー効率を示す指標であり、冷却効率の良し悪しがそのままPUE値に反映されます。<冷却に多くの電力を使うほどPUEは上昇し、運用コストや環境負荷が増大します。

たとえば空調による空冷方式では消費電力の約40%が冷却に使われ、PUEは平均よりも高くなりやすいです。一方、冷却効率を高めればPUEを大幅に改善できます。

冷却効率の改善は、単なる省エネ対策ではなく、データセンターの競争力とESG経営を支える重要戦略と言えるでしょう。

データセンター冷却の主な方式

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データセンターの冷却方式は大きく空冷式・水冷式・ハイブリッド式に分類されます。
それぞれの特徴やメリット・デメリットを以下の表にまとめました。

冷却方式 特徴 メリット デメリット
空冷 空気循環(ファン/エアコン)で冷却 設備導入が簡単で実績豊富 ファン動作で電力消費が大きい、冷却効率は低め
水冷 ・冷却液が通るプレート(コールドプレート)を導入
・サーバーラックの背面に熱交換器の役割を果たすドアを設置し、排出される暖かい空気を冷却水で冷やす
冷却効率・省エネ性能に優れる、高密度化にも対応可能 初期導入費用が大きく設備改修が必要なことも
ハイブリット 空冷・水冷のいいとこどり 冷却効率がさらに向上 ・空冷と水冷の冷却効果を可視化するためのモニタリング・シミュレーションが不可欠
・水冷と空冷の両方を導入するため、メンテナンス等の管理コストが高くなる

以下では主流の空冷と次世代の水冷を中心に紹介します。

空冷方式|従来主流のエアコン・外気冷却システム

空冷方式は、室内のCRAC(空調機)や外気を利用してサーバーを冷やす従来型の仕組みです。

構造がシンプルで導入が容易という利点があり、多くの施設で採用されています。しかし、冷却効率と高密度対応に限界があります。

空気は熱容量が小さいため大量の空気流が必要で、ファンや空調の電力消費が増えてしまします。また、ラック密度が高いと冷気が行き渡らず、10〜20kW程度が実用上の上限とされます。騒音や塵埃の問題もあり、省エネ化・高密度化が進む現在では空冷単独では限界を迎えつつあります。

水冷方式|注目を集める次世代冷却技術

水冷方式は、冷却水や不導体液体でサーバーの発熱部を直接冷やす方式です。

空気よりも数十倍の熱を運べるため、少ない流量で高発熱サーバーを効率的に冷却できます。また、局所過熱を防ぎ機器の寿命延長や静音化、設置スペース削減にもつながります。

一方で、配管や冷却液管理など導入コストと運用面のハードルは残ります。

それでもAI・クラウド時代の高発熱環境に対応するため、国内外で採用が急速に進んでいます。

総じて水冷方式は、高密度化と省エネ化を同時に実現する次世代の冷却技術といえるでしょう。

ハイブリッド冷却|空冷+水冷の併用による最適化

ハイブリッド冷却は、空冷と水冷を併用して効率と安定性を両立する方式です。

高発熱ラックには水冷を適用し、それ以外は空調で冷やすことで、既存設備を活かしながら冷却性能を向上できます。特に中規模データセンターや既存施設の段階的アップグレードで採用が進んでいます。

代表例は、ラック背面に水冷ヒートエクスチェンジャーを設置するリアドア冷却や、一部エリアのみ水冷化するインラック水冷です。

これにより高密度ラックの熱を水冷で効率的に回収し、残りを空調で補うことで低コストで全体のPUE改善を図れます。

一方で、空冷と水冷が混在するためエネルギー管理や運用設計が複雑になる課題もあります。既存設備との整合や冷却効果の可視化には、シミュレーションとモニタリングを活用した綿密な設計が不可欠です。

ハイブリッド冷却は既存空冷施設を生かしながら水冷化を進めるソリューションであり、データセンターで導入も進められていくはずです。

データセンター冷却における課題と対策

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データセンターでは冷却設備が全電力の30〜40%を消費し、IT機器の使用電力を上回る場合もあります。そのため冷却効率が低い施設では、直接的に運用コストが増大します。

この課題に対しては、PUE(Power Usage Effectiveness)の改善が最も効果的な解決策です。

主な対策は以下の通りです。

  • 温度・湿度設定の最適化:ASHRAE基準の範囲内で室温を高めに保ち、過冷却を防止
  • 気流制御と空調効率化:ホット/コールドアイルの分離やAI制御空調の導入で無駄な冷風を削減
  • フリークーリング活用:外気や冷却塔を利用し、チラー稼働を抑制
  • 液冷・ハイブリッド化:高負荷ラックのみ水冷化し、施設全体の電力を最大15%削減した事例も報告
  • 高効率設備への更新:老朽化したCRACやポンプを省エネ型に交換

これらの施策により、PUEを改善できれば、年間電力費を大幅に削減できます。

エネルギー価格の高騰やESG対応の観点からも、冷却コスト最適化は経営課題の最前線にあります。

水冷システムの導入メリット

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続いて、水冷システムを導入することで得られる具体的なメリットを、定量的データやコスト比較の視点で示します。

主に電力効率向上によるコスト削減、スペース有効活用とラック密度向上、長期的なROI(投資回収)の3点から見ていきます。

電力コストの削減効果

水冷の最大の利点は、データセンター全体の電力効率(PUE)の劇的改善です。

冷却電力を削減することで、総電力消費を大幅に抑えられます。従来の空冷施設ではPUEが1.5〜2.0とされ、消費電力の半分以上が冷却用途でした。これに対し、水冷導入施設では1.1〜1.3を実現でき、投入エネルギーの約90%をIT処理に充てられます。

実際、ある企業では空冷のみでPUE1.6だったデータセンターを水冷化し、1.2へ改善。電力コストを大幅に削減しました。また、水冷75%・空冷25%のハイブリッド化によりエネルギー消費を15%超削減できた研究報告もあります。

参考:データセンターのエネルギー消費:空冷と液体冷却

例えば年間1億kWhを消費する施設がPUE1.5→1.2へ改善すれば、年間約2,000万kWh(数億円規模)の節電効果が得られます。さらに、これに伴いCO₂排出量も削減でき、カーボンニュートラル戦略の推進にもつなげられます。

水冷は単なる技術導入に留まらず、コスト最適化と環境にやさしい価値向上を同時に実現する経営投資といえます。

設置スペースの最適化

水冷の最大のメリットは、「限られた部屋のスペースを最大限に活用できる」ことです。

結果として床面積や建設コストが削減され、データセンターのROI(投資効率)を大幅に向上させます。

また、水冷では大型のCRACユニットや空調ダクトが不要となり、タンクと熱交換ユニット程度で構成できるためレイアウトの自由度が拡大します。

これにより、都市部など限られた敷地でも高密度運用が可能となり、エッジデータセンターやマイクロデータセンターの展開にも有利です。

このように水冷は、面積あたりの計算能力を飛躍的に高め、空間と投資の効率を最大化する技術といえます。

長期的なROI(投資回収)の視点

水冷システムは初期費用こそ高額ですが、長期的には高いROI(投資利益率)を実現できる技術です。

導入によって冷却関連コストが最大50%削減されるケースもあり、年間1億円の電力費が5,000万円に圧縮できれば、それだけで年間5,000万円の経費削減効果が得られます。

参考:Revolutionizing Data Center Efficiency with Trumonytechs' Liquid Cooling

さらに、空調フィルター交換やファン点検などの保守コストの削減なども節約に繋がります。例えば、初期費用1億円・年間削減額3,000万円なら約3.3年で回収可能です。加えて、エネルギー価格上昇や炭素税の導入が進めば、電力削減の価値は今後さらに高まると予想されます。

データセンターの水冷化を進めるには安価ではありませんが、省エネ・保守軽減・環境適応を同時に実現する経営投資として、多くの先進企業が採用を進めています。

主要メーカーと水冷技術の動向

水冷技術の普及に伴い、関連マーケットにも大きな動きが出ています。

ここでは冷却装置や水冷ソリューションを手掛ける主要メーカーの動向、および今後予想される冷却トレンドについて概観します。

国内主要メーカーの冷却装置シェア動向

日本国内に目を向けると、従来は空冷設備(空調機やチラーなど)で強みを持つ総合電機や重工各社が冷却市場をリードしてきました。

例えば冷却装置では富士通ゼネラル、日立、ダイキン工業などがデータセンター向け空調で実績があります。しかし水冷の分野では、新たに部品・素材レベルの専門企業が台頭しつつあります。

その一例がホース・配管システムのプロフレックス株式会社です。

プロフレックスは世界的流体制御メーカーであるParker Hannifin社の国内有力代理店で、データセンター向けの水冷ホースソリューションを提供しています。

2025年に、海外DCで実績豊富なParker社製冷却ホース(7395 E-Z FORMシリーズ)の国内在庫・加工サービスを開始し、日本市場での水冷配管ニーズに応えました。

このホースは柔軟で耐圧・耐久性に優れ、長期使用でも漏れや劣化リスクを最小化できるため、空冷から水冷へのスムーズな移行を支える重要部品となっています。

弊社はユーザー企業の不安に応える体制も整えており、国内における水冷インフラ拡大の裏方を担っています。

くわしくはこちらの記事を参考にしてください。
プロフレックスのParker製水冷アッセンブリサービス

データセンター冷却に関するよくある質問

最後に、データセンターの冷却に関するよくある質問を紹介します。

データセンターの水冷と空冷ではコストにどれくらい差がある?

初期投資の面では、水冷方式の方が空冷方式より高くなる傾向があります。
水冷では冷却水を循環させるためのチラー(冷水機)や熱交換器、配管設備が必要となり、空冷設備の更新と比べて1.2〜1.8倍程度のコスト増になる可能性が高いです。特に既存の空冷データセンターを水冷化する場合、建物構造の改修費用も加わるため、数億円規模の追加投資が発生することもあります。

一方で、運用コスト(ランニングコスト)は水冷の方が大幅に安くなります
水冷は空気ではなく水で効率的に熱を運ぶため、冷却用の電力を30〜50%削減できる事例もあり、月々の電気代を大きく抑えられます。また、空冷で頻繁に必要となるフィルター清掃やファン交換などのメンテナンスが減るため、保守費用の削減効果も期待できます。

初期コストは空冷が有利ですが、長期的な運用コストを含めると水冷の方が総コストを抑えられるケースが増えています。とくに高密度GPUサーバーやAI用途など発熱量の大きい設備を運用するデータセンターでは、水冷化による省エネ効果と安定稼働の両立が経済的メリットとして注目されています

冷却メーカーを選ぶ際のポイントは?

冷却はデータセンターの命運を握る重要インフラです。
メーカー選定にあたっては以下のポイントを重視すると良いでしょう。

  • 性能と適合性を確認:自社の冷却要件(ラック密度・必要冷却能力・PUE目標など)を満たせるかを確認
  • 実績と信頼性を確認:導入実績や長期稼働データ、ユーザー事例の有無をチェック
  • サポート体制:設計・施工・運用教育・トラブル対応まで一貫支援してくれるベンダーを選ぶ
  • コストとROIを確認する:5〜10年スパンでのTCO(総所有コスト)とROIを比較する

これらを総合的に判断し、性能・信頼性・将来性・経済性のバランスをとることが最適解です。

まとめ|水冷化は次世代データセンターの鍵

データセンター冷却は今、AI時代の熱密度と電力制約という転換点を迎えています。
もはや従来型の空冷では限界があり、水冷の導入が不可欠です。

初期投資や技術習熟といった課題はありますが、近年の技術進歩と実績がそれを十分に克服しつつあります。経営層に求められるのは、水冷を「コスト」ではなく「戦略投資」として捉える姿勢です。もちろん、すべての施設が一度に水冷へ移行できるわけではありませんが、部分導入やハイブリッド化からでも大きな効果が期待できます。

水冷は「コスト・性能・環境」を同時に満たす次世代の鍵であり、その導入はデータセンターの競争力を左右します。今こそ、自社の冷却戦略を見直し、水冷化を中核に据えた未来設計を始めましょう。

弊社プロフレックスは、海外データセンターでも実績のあるParker製7395 E-Z FORMホースを加工・出荷まで対応するアッセンブリサービスを国内で開始しています。配管・ホース・カップリングのご提案からアッセンブリ(組立)・検査・納品まで短納期で対応しています。

データセンターの冷却方式に水冷化を目指している方は、一度ご相談ください。

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